この動画では、全国に先駆けて、鶴見川で実施された「総合治水対策」と、その取り組みを実践してきた市民活動を紹介します。
鶴見川は江戸の昔から大氾濫を繰り返す「暴れ川」として知られてきました。
1970年代後半には、通常の河川整備や下水道整備では、大水害を回避できない状況となってしまったのです。
この事態に対応して、国土交通省、京浜河川事務所(当時の建設省、京浜工事事務所)は、流域の自治体と連携した取り組みを開始しました。つまり、河川整備や下水道整備だけではなく、流域の森や田畑を守り、雨水調整池などを設置する、新たな取り組みである、「総合治水対策」を1980年から開始したのです。
鶴見川流域では、多くの市民団体が活躍しています。鶴見川源流にある、みつやせせらぎ公園では、鶴見川源流ネットワークの各団体が、町田市と連携し、治水対策も盛り込んだ環境管理活動を定期的に実践しています。
JR横浜線、鴨居駅の北に隣接する鶴見川中流域には、地域の人々が活用できる広い河川敷が整備されています。ここでは、ノカンゾウの植栽を通して、市民団体と企業が連携し、定期的な川辺の環境管理活動が進んでいます。
鶴見川下流の綱島には、30年間活動してきた「綱島バリケン島」があります。ここでクリーンアップ、魚採り、自然観察会を行っており、小学生の学習支援の場所にもなっています。
保水の森から始まった細い流れは、豊かな水量となり、横浜市鶴見区生麦の河口で東京湾に注ぎます。
淡水と海水が混じりあう汽水域には、多種多様な生きものたちが生息していおり、河口干潟では貝殻浜生物調査隊による「生きもの定例調査」が行われています。
(岸由二先生からコメント)
1980年に「総合治水対策」を始めた鶴見川とその流域は、そのあと、治水だけではなく、環境や市民のふれあい、そういういろんな要素を組み込んだ「水マスタープラン」、さらには、「流域治水」という新たな流域計画を推進する河川流域となっています。ポイントは、流域の自治体(東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、町田市、稲城市)が相互に連携しないと出来ない、そしてこの連携は、国土交通省の力だけでは推進できない、そこで、その間をつなぐ市民団体の協力が重要なのです。
これをやってきたのが「NPO法人 鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)」
「鶴見川流域ネットワーキング」が定例的に活動する「ふれあい拠点」が位置付けられています。
そこで、地域の学校、企業、地域の組織が応援して、これまで10年、20年にわたっていろいろな計画を推進してきました。
鶴見川下流の「綱島」鶴見川本流の左岸側には、約1㎞にわたってしっかり整備された「緑の河辺」が広がっています。
ここでは、いくつかの団体が定例的な活動をして、緑の保全、自然の調査、そして緑の管理もしています。
今、ここで次世代の子どもたちもいろんな活動をして育っています。ここから、どんな未来の世代が育っていくか、それは、鶴見川流域水マスタープラン、流域治水の希望でもあります。
今後、水マスタープラン、「流域治水」がさらに進んでいきますが、流域の市民団体の活動がさらにさらに計画を応援して、そこに、自治体も企業も参画していくという展開になっていくことでしょう。
「流域治水」は、河川管理者や自治体、市民団体と企業などが連携し、「流域」として実践することが大切だと思います。
出演
岸由二(NPO法人 鶴見川流域ネットワーキング代表、慶應義塾大学名誉教授)
深見幹朗(NPO法人 鶴見川源流ネットワーク事務局長)
撮影 伊藤幸晴 佐藤将之 下西和比古
編集 伊藤幸晴
企画 NPO法人 日本水フォーラム
制作・著作 NPO法人 日本水フォーラム NPO法人 鶴見川流域ネットワーキング 港北ふるさとテレビ局
(2025年3月制作)